2025年02月27日 (木)

海外からの外国人出向者の受け入れ

最近では、親子会社間の異動に限らず、取引先などから、
またシニアなポジションではなく、研修的な意味合いで
外国人出向者を受け入れるケースも増えています。
今回は、受け入れ時の主な留意点について、纏めてみます。

在留資格(ビザ)

受け入れる外国人は、合法に日本に入国し、
合法に日本で就労する在留資格を取得している必要があります。
日本法人の経営者であれば「経営・管理」
それ以外であれば「企業内転勤」「技術・人文知識・国際業務」
「高度専門職」などの資格が考えられます。

給与計算

非居住者であった外国人も、1年以上の就労の予定で日本に入国すれば、
その翌日から税法上の「居住者」となり、
原則他の日本人スタッフと同様の給与計算がなされます。
但し、過去10年以内に日本国内に居住していた期間の合計が5年以内の場合は、
「非永住者」という特殊なステイタスとなりますので、注意が必要です。
この場合は、国内源泉所得と、
日本に送金された、または日本で支払われた国外源泉所得のみに課税されます。
よって、海外法人で支払われ、日本に送金されなかった給与等は課税されません。

社会保険

海外から出向者を受け入れる場合、社会保険手続き上で注意すべきは、
給与・賞与の全額が海外法人から支払われ、日本法人からは支払いがない場合です。
一般に、年金事務所・健保組合に問い合わせると、
日本法人から給与の支払いがなければ、社会保険に加入する必要はないと回答されますが、
念のため、事前に状況を説明したうえ、確認を取った方が良いでしょう。

一方、日本で住民登録すれば、国籍を問わず社会保険への加入義務が発生しますので、
市区町村において、国民年金・国民健康保険への加入手続きを行うことになります。
(社会保障協定により適用免除となる場合を除く)

労働保険

労働保険についても、注意すべきは、
給与・賞与の全額が海外法人から支払われ、日本法人からは支払いがない場合です。
先ず、ベルギーなど、少数ですが、
社会保障協定により労働保険がカバーされている国がありますので、
その場合は加入免除となります。
以下、社会保障協定対象外である場合について述べます。

●雇用保険については、厚労省の「業務取扱要領」のP25に、
 「日本国に在住する外国人は、外国公務員及び外国の失業補償制度の
 適用を受けていることが立証された者を除き、国籍のいかんを問わず被保険者となる」

 と明記されています。
 しかし、日本での給与支給がなければ、失業給付の対象にもなりませんので、
 雇用保険の加入手続きはしないケースが多いようです。

●労災保険については、
 日本法人から指揮命令を受け、「労働者性」があるのであれば、労災の対象となり、
 海外法人からの給与を円換算して保険料を計算するという学術論文も見られます。
 しかし、法令上の根拠もはっきりしないことから、
 実務上、徹底している会社はごく少数のようです。

外国人出向者を受け入れる際には、海外法人と日本法人との間で、
出向者の扱いに関する合意書も必要になります。


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≪2025年2月1日発行 マロニエ通信 Vol.264より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie