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令和4年の総務省の調査によると、
445万人の非正規労働者が就業調整(働き控え)を行っています。
以前から、その要因に年収の壁があると指摘されてきました。
年収の壁には、主に税金に関わる壁と社会保険に関わる壁があると言われています。
昨年よりニュースで大きく取り上げられている「103万の壁」は税金に関わる壁ですが、
今回は、一般に「106万の壁」「130万の壁」と言われる社会保険に関わる壁について、
改めて取り上げたいと思います。

「106万の壁」「130万の壁」とは?
労働者が社会保険料を負担し、その分手取り額が減ることを避ける収入基準が存在します。
その基準が従業員51人以上の特定事業所の労働者なら月8.8万円≒年間106万円、
特定事業所以外の労働者なら年間130万円であることに由来して、
「106万の壁」「130万の壁」と呼ばれています。

年収の壁・支援強化パッケージの概要
「106万の壁」「130万の壁」に対して、働き控えを抑制するため、
厚生労働省は令和5 年10月に「年収の壁・支援強化パッケージ」を示しました。
そのパッケージは4本柱となっています。
それぞれのポイントを解説します。
(1)キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース
手当等支給メニュー、労働時間延長メニュー、
併用メニュー(手当等支給メニューと労働時間延長メニューの併用)がある助成金です。
手当等支給メニューでは、社会保険適用となったパート労働者に
社会保険適用促進手当を支給することが支給条件です。
労働時間延長メニューでは、パート労働者の所定労働時間を延長し、
社会保険適用となった場合に助成金が支給されます。
助成金の詳細については以下URLをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/syakaihoken_tekiyou.html
(2)社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
先述した社会保険適用促進手当が、
キャリアアップ助成金・社会保険適用時処遇改善コースの助成対象となった場合、
本人負担分の保険料相当額まで社会保険料の算定から除外されます。
その結果、本来より保険料が低くなります。
(3)事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
社会保険適用外のパート労働者が職場の人手不足に対応するため残業すると、
一時的に収入が増え、106万円、130万円を超える可能性があります。
このとき「一時的な収入変動」に係る事業主証明書を保険者に提出することで、
引き続き被扶養者として認定を受けることができます。
職場にとっても、人手不足に柔軟に対応できる仕組みです。
(4)配偶者手当の見直し
配偶者手当は企業独自の制度で、
収入が一定額(主に税金の壁である103万円、もしくは社会保険の壁である130万円)を超えると
配偶者の会社で配偶者手当が支給されなくなることが、就業調整の理由のひとつと指摘されています。
今回のパッケージでは、時代と自社の従業員のニーズに合った見直しを行えるよう、
手順のフローチャートが公表されました。
年収の壁・支援強化パッケージの制度を活用することで、
労働者が手取りを減らさずに労働時間を維持することも可能です。
一人一人の働き方のニーズと照らし合わせながら、
制度活用が有効的であるか否かを見極めていくことが必要です。
そのために労使で積極的にコミュニケーションの機会を設け、
働き方について検討してみてはいかがでしょうか。
「年収の壁」が注目されるこの機会に、
人材確保と働き方の希望がかなえられる職場づくりの両立を目指しましょう。
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≪2025年2月1日発行 マロニエ通信 Vol.264より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie