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令和7年4月1日施行の改正育児介護休業法では、
要介護状態の対象家族を介護する労働者及び3歳に満たない子を養育する労働者に対し、
テレワークの選択を可能にする措置の導入が事業主の努力義務となります。
併せて、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対する措置として、
テレワーク等(10日/月)が選択肢として組み込まれています。
しかしながら、公益財団法人日本生産性本部が実施した「第14回働く人の意識調査」によると、
テレワーク実施率は令和2年の調査開始以降過去最低を更新し、
中でも中規模企業・小規模企業の減少率が高い結果となりました。
時代の変化に即したテレワークのあり方
アフターコロナのテレワークの傾向としては、これまでのようなBCP対策だけでなく、
柔軟な働き方を希望する優秀な人材の採用・雇用維持、
従業員エンゲージメント向上、女性活躍推進、企業価値向上など、
テレワークの実施を経営戦略の一環として位置づける企業が増えています。
まずは自社におけるテレワークの実施目的を明確にし、
その目的に合わせて実施対象者の範囲や実施形態・実施頻度などを見直すことがポイントです。
対象者範囲の検討と適用時のポイント
テレワーク環境を整備すると同時に、業務の棚卸しや業務プロセスの見直しを実施し、
テレワークで行える業務の範囲を特定し、実施対象者を拡大していくことが望まれます。
対象業務や対象者の範囲を定める際は、これまでの業務の在り方を前提にするのではなく、
職務内容の本質的な見直しや管理者側の意識改革、業務遂行方法の見直し等を検討してみましょう。
現状、業務遂行に悪影響が生じていたり労務管理上の問題が生じたりしている場合は、
テレワークの実施対象者を見直し、自律的に働けない従業員にはテレワークを適用しないことも考えられます。
●他社事例
▷ 数年かけて対象者を生産工程以外の全従業員に拡大した
▷ 名刺に携帯番号のみを記載し、社内勤務者の電話対応の負担を軽減した
▷ 工場勤務の従業員の業務の棚卸しを実施し、業務の一部をテレワークで実施可能とした
▷ 工場勤務の従業員にタブレット型端末を1人1台支給したところ業務効率がアップし、
従業員満足度も向上した
テレワーク実施者の人事評価
テレワーク制度の実施に伴い人事評価制度の見直しを行う場合は、
通常勤務の従業員とテレワークで働く従業員のいずれにとっても納得感のある評価制度とすることが重要です。
●評価制度構築のポイント
☑ できるだけシンプルで分かりやすい制度にする
☑ 評価の対象、項目、基準等をオープンにする
☑ 評価者及び被評価者に評価制度を充分に理解させる
☑ 評価者の評価スキルの向上を図るため評価者研修を実施する
☑ 評価結果を被評価者にフィードバックする
☑ 被評価者の自己評価と評価者による評価のすり合わせを行う
テレワークは労働者が自律的に働くことを前提とするものであり、
その点において「目標管理」と親和性が高いと言えます。
目標設定→実行→評価→改善のPDCAサイクルを回しながら処遇に反映することで、
評価の見える化が図られます。
また、テレワークでは、「何をやるか」「いつまでにやるか」「どこまでやるか」
「どれくらい時間をかけるか」を明確にすることも重要です。
勤務形態に関わらず、公平かつ適正な人事評価が行われる仕組みが整備されていることにより、
評価する立場にある管理職も評価される側の部下も安心して働くことができ、
従業員エンゲージメント向上につながります。
テレワーク導入時・運用上の課題
Q1.情報セキュリティ対策はどうしたらいいの?
A1.マルウェア感染対策、不正アクセスや端末の紛失・盗難といった事故を
未然に防ぐためには適切な対策と運用が重要です。
総務省の「中小企業等担当者向けテレワークセキュリティの手引き」を参考に、
適切なルールを定め、対策を実施しましょう。
IPAなどの公的機関が公表しているテレワーク勤務者向けの教育用ツールを活用し、
従業員のセキュリティ意識の向上を図ることも有用です。
Q2.メンタルヘルス不調が心配・・・
A2.特に新入社員や配置転換したばかりの従業員の場合、
職場の人間関係が十分に構築できておらず、業務の進め方もよく分からないことで
不安やストレスを感じやすくメンタルヘルス不調を引き起こしやすい傾向があります。
従業員本人によるセルフケアを積極的にサポートしたり
上司などによるラインケアを実施したりするほか、
心の健康について相談できる窓口を設定するなどの体制を整備することが重要です。
また、テレワークではオンとオフの切り替えが難しくなることから、
休憩時間を明確に設定することや時間外労働や休日労働を原則禁止とすることも
メンタルヘルス対策として有効です。
今回の法改正は、フルタイムでの育児や介護をする労働者の早期職場復帰の実現を背景としていますが、
働く場所や時間を柔軟に活用することができるテレワークは、
同時に、優秀な人材の確保や離職防止にもつながります。
これを機にテレワークの導入や運用の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
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≪2024年12月1日発行 マロニエ通信 Vol.262より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie