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去る6月13日に成立した年金制度改正法は、
社会保険の加入対象の拡大や
在職老齢年金制度の見直し
などの重要な内容により、注目を浴びました。
改正の内容には、外国人の脱退一時金に関するものも含まれています。
本稿では、脱退一時金制度の歴史を振り返りながら、
今回の改正の意義を考えてみたいと思います。
脱退一時金制度は、外国人労働者の社会保険料の掛け捨てを防ぐ目的で、
1995年に創設されました。
一般に、外国人労働者は、日本での滞在期間が短く、
保険料を納付しても、老齢年金を受給できない場合が多かったためです。
すなわち、日本に戻らない前提で創られた制度でした。
その後、日本の経済情勢において、二つの変化が見られました。
外国人労働者の滞在期間の長期化と、新しい在留資格の創設です。
①脱退一時金は、被保険期間に応じて一時金の形式で支給されますが、
法律改正により、2021年4月から、支給上限が3年分から5年分に引き上げられました。
➁外国人技能実習制度の発展(2019年技能実習法改正)と
特定技能外国人制度の創設(2019年出入国管理法改正)に伴い、
日本に戻らない場合のみならず、本国への一時帰国の場合でも、
脱退一時金が請求できることが明示されました。
ここで、②につき、厚生年金保険法第14条二の文言からは、
一般的には、雇用契約が継続している一時帰国の場合は、資格喪失に該当せず、
脱退一時金の請求は適切でない、と読めます。
そうであるにも関わらず、技能実習生関係でなくとも、
一時帰国の際には脱退一時金を請求できるという、
拡大解釈をした事例が数多く発生し、問題になっていました。
直近で、外国人労働者の滞在期間が更に長期化している現状も踏まえ、
今回の年金制度改正法では、脱退一時金について、二点大きな制度変更が規定されました。
1)支給上限の更なる引き上げ
支給上限が、現行の5年分から8年分に引き上げられることになりました(政令により措置予定)。
これは、育成就労制度の創設により、育成就労(3年)を経て特定技能1号(5年)に移行し、
計8年我が国に滞在する外国人の増加が予見されることにも対応しています。
2)支給要件の見直し
脱退一時金は、一時帰国の場合でも受給可能ですが、
一旦受給してしまうと、それまでの年金加入記録が消されてしまいます。
そこで、将来の年金受給(加入要件10年間)に結び付け易くする観点から、
再入国許可付きで出国した者には、当該許可の有効期限内には、
脱退一時金を支給しないことになりました。
(公布された令和7年6月20日から4年以内で、政令の定める日から施行)
2)の改正は、外国人の将来の生活保障を改善させる方策にも見えますが、
筆者が聞いた限りでは、脱退一時金の複数回受給を当然のこととしてきた、
外国人労働者および関係者からは、評判が芳しくないようです。
今回の年金制度改正法は、今すぐ施行されるものではありませんが、
近い将来には施行されますので、
外国人労働者および受入企業等関係者には、
それを前提とした生活設計と周知・支援活動が求められます。

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≪2025年9月1日発行 マロニエ通信 Vol.271より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie





