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政府によるAIの積極的な活用が推奨される中、
労務管理の現場でも、AIの活用が広がりつつあります。
厚生労働省は、AIやメタバースなど
最新技術の活用による労働法制上の課題について検討を進めるため、
同技術のHR分野について調査を実施しました。
最新の調査報告では、国内外の事例や法的留意点、導入効果と課題が整理されており、
今後の戦略を考えるうえで有益です。
本記事では、調査報告よりHR分野でのAIの活用状況、活用効果及び今後の課題について紹介します。
なお、本調査はAIを既にHR分野で活用している会社の内、
一部の事例を取り上げた内容であることをあらかじめご了承ください。

AI活用の導入シーンと法規制・ガイドライン
HR分野において、AIは採用、配属、評価、人材開発、安全衛生等のシーンで活用され始めています。
ただし、現時点で活用している企業は、回答した企業の内10%未満となっており、
普及が広く進んでいるとは言えないのが現状です。
実際に活用している企業のAI活用目的は、
「人の特性を分析する」「企業内部の労働市場のマッチング」等が挙げられます。

また、AI活用にあたっては、国内外で法規制やガイドラインの整備が進みつつあります。
国内では人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案が閣議決定され、
AI事業者ガイドラインの制定等により推進する事項や統一的な指針が示されています。
海外でも EUのAI規則案や米国のAI倫理原則など日本の法律等に準ずるものも制定されていますが、
性別や人種による偏りがないように第三者の監査を義務付けるものや、
透明性・説明責任・データガバナンスなどの要件を定めたものなど、
運用・開発にあたり厳格な要件を定めている国もあります。
そのため、グローバル企業でAIを導入する場合には複数の基準を同時に考慮する必要があります。
HR分野におけるAI活用効果
採用や評価等のシーンにおけるAI活用効果は、次のようなものが挙げられます。
①業務効率化
AIが代替する事により人的なコストが削減でき、
それにより個々の人材に即した対応に時間が割ける
➁業務品質・制度の向上
統一的・定量的な指標を基に人材を評価でき、
データに基づいて分析・可視化が出来る
③AIを利用される側に与える効果
対人ではなく対AIになることで、面談や面接に落ち着いて望める。
人ではなくAIの評価の方が、機械的に公平に評価されていると感じる
「業務効率化」「業務品実・精度の向上」は
AIの利用に限らずDX推進による効果でもありますが、
「AIを利用される側に与える効果」はAIならではの効果であります。
従業員及び応募者の満足度や納得感の向上につながり、
企業側にとっても選考プロセスや人事評価の透明性を高める効果があります。
リスク管理と今後の課題
一方、AI導入時のリスクとして、次のようなものが挙げられます。

これらのリスクは、AI導入が進むほど顕在化しやすくなります。
また、HR分野に限らず、現状のAIという技術、人間の性質に起因するリスクもあるため、
導入企業側での対応にも限界があります。
だからこそ、技術的な信頼性だけでなく、
運用面での透明性、説明責任を確保する体制づくりが不可欠です。
さらに、AIを利用する者がその仕組みや意図を理解できるよう、
教育や情報提供を継続的に行うことがリスクの低減と信頼構築につながります。
AI活用は採用や育成の質を高め、業務効率化にも寄与しますが、
その真価は適切な運用体制とリスク管理のもとに発揮されます。
そして、AIはあくまで人事戦略を支える道具であり、
それを使って最後には人が判断する責任を負います。
信頼と納得感を両立させる運用こそが、持続的な効果につながると考えます。
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≪2025年10月1日発行 マロニエ通信 Vol.272より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie




