Theme
Month
海外赴任を巡る環境の変化と海外赴任規程
先日、大手企業の海外人事担当者が集う会合に参加する機会があり、
先端企業の動向について知ることができましたので、共有させていただきます。
海外赴任を巡る周辺環境として、共働き世帯の急増、介護ニーズの爆発、
世界的インフレ、円安の急進が起こっています。
その一方で、企業の海外赴任規程のひな型は、昔から変わっておりません。
①赴任者は30〜40代の日本人男性
②配偶者は専業主婦の日本人女性
③子女は日本人学校に通学
を暗黙の前提として、策定されていました。
しかし、現在では、
①’赴任者の年齢は幅広く、外国籍者・女性もいる
②’配偶者の共働きが増え、外国籍者もいる
③’子女のインター校通学希望者が増加
という現実があります。
その結果、親の介護への対応、外国人赴任者・配偶者の母国への一時帰国、
帰国後の子女の受験対策、といった課題が顕在化していますが、
現状としては、「個別判断」で対応している企業が大半となっています。
これにより、人事部側は事務が逼迫、赴任者側は不公平感を募らせるという、
負のスパイラルが数多く見られます。
典型的課題について
現時点で最大の課題と言われる、a.子女教育とb.介護につき、少し詳しく見てみます。
a. 大多数の会社は、日本人学校費用は会社負担、
インター校の場合は差額は個人負担、としてきました。
しかし、インフレと円安の進行により、
例えば上海では、 2025年時点で日本人学校とインター校との学費の差額は
年間約600万円というデータもあります。
結果として、海外赴任は家計の逼迫に直結するとして、赴任の敬遠に繋がっています。
b. 団塊の世代の子が40〜50代となり、海外法人の幹部となっています。
介護ニーズが急増しているにも関わらず、
会社負担の一時帰国は1年に1回しか認められないのが通常であるため、
これを理由として赴任を辞退するケースが顕著に増えているとのことです。
どう対応するのか-‘Core&Flex’という考え方
これらの課題に対応できないままですと、優秀な人材を海外赴任させられないことから、
海外事業確立とグローバル人材育成という、二つの戦略目標 が達成できないことになります。
そこでどうするかですが、大企業の一部で、
‘Core&Flex’という考え方が始まっているようです。
これは、
渡航や健康診断など、労働法令上必ず遵守すべき費用は会社が全額実費精算する(Core)一方、
一時帰国や子女教育など、世帯によって必要性や優先順位が変わるものは、
赴任者が、付与された上限金額内で、必要なサポート項目を選択する(Flex)、
というものです。
ある大手企業では、
一般より高い水準に設定されていた海外赴任手当(インセンティブ)を廃止することを原資として、
大きなFlexパッケージを創設し、
家賃上限超過部分、塾代、残留家族支援などにも自由に使えるようにしたところ、
従業員のモティベーションは向上し、人事部の手間は大幅に減ったとのことでした。
全ての企業が直ぐに真似のできることではないですが、
例えば、語学研修費用を削って、介護のための一時帰国の回数を増やす選択肢を与えるなど、
小さく始めるという手法はあり得るでしょう。
≪2026年4月1日発行 マロニエ通信 Vol.278より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie





